用語集


法律の世界の様々な用語や表現

 ここでは、一般的にはあまり用いられることのない法律の世界の用語や独特の表現について順を追って解説していきたいと思います。
普段は馴染みのない言葉が多いですが、社会生活をしていく上で、これら基本的な知識を持っていることは、公衆マナーや一般道徳を守ること同様、とても大切なことです。

1.<はじめに>

 現代の日本国で生活していく上で、日本人であっても外国人であっても知っておいて損はないことを最初に解説していきたいと思います。

まず、日本国は属地主義の立場を取っています。

従って、外国人であっても国内で法令違反を為した場合には日本国の法律によって処罰されます。
それとは逆に、属人主義というのは、その人が属する国の法律をその国を離れても適用するという考え方です。
(江戸時代の日本がこれにあたります)


次に、実は法令にも優先順位がありまして、上から順番に効力が高いとされています。

憲法: いわゆる日本国憲法
条約: 国家間の文書による合意事項
法律: 国会の議決によって制定される法の形式
政令: 内閣が制定する命令
省令: 各省大臣が、主任の事項について発する命令
府令: 内閣府の行政事務に関し、総理大臣が発する命令
条例: 地方公共団体が、上記の法令の範囲内で議会の議決によって制定する法
規則: 都道府県知事または市町村長が、その権限によりその地方自治体の中で制定する規則

※例えば、生活保護法(法律)を廃止することは、その上位法である日本国憲法第25条に規定される生存権を侵害する虞があるため、それを全廃する法律を制定することはできません。


 法律は年々時代の流れとその時の社会通念などによって改正されていきますが、新しく法を新法、それまでの法を旧法といいます。 新法と旧法の規定が矛盾した場合、当然ながら新法が優先されます。

但し、新法が施行される以前の事案については、新法を遡及的(そきゅうてき)に(=過去に遡って)適用することはできません。

これは、刑法などの刑事事件において非常に重要です。

中には、利息制限法による上限金利のように、判例の積み重ねによって、その解釈が遡及的に影響を及ぼした事例もあります。


また、法律には、特別法一般法と呼ばれるものがあります。

例えば、利息の定めのない金銭の貸与の場合は、個人間の貸借であれば民事法定利率年5%(民法第404条)が適用されます。

しかし、当事者の一方が商人である場合は、商法が優先され、商事法定利率年6%(商法第514条)が適用されるわけです。

このように、同じ内容によって民法と商法で異なる(利息の)規定があった場合、民法に対して特別法たる商法が適用されるわけです。

さらに、当事者が元請-下請事業者である場合、下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)が商法に優先適用され、法第4条の2に規定される公正取引委員会で定める年14.6%による遅延利息を請求できる場合があります。

※実際にどの法律が適用されるかは、個別具体的にケースバイケースとなりますので、当事務所までお気軽にご相談下さい。


社会生活をしていく上で、最も基本的な法律である民法には三大原則と呼ばれるものがあります。

所有権絶対の原則:所有者はその所有物を自由に使用・収益・処分することができ、他人(国家も含む)が干渉することは原則としてできません

過失責任の原則 :損害が発生した場合、加害者に故意または過失がある場合に限って損害賠償責任を負うとする原則です

私的自治の原則 :個人は自己責任をおいて自らの意思によって自由に契約行為を為すことができ、国家はこれに干渉しないとする原則です。

※但し、民法は私権に分類されています。

そのため、 公共の福祉に反してはならない(民法第1条1項):(個人の利益よりも公共の福祉が優先されます)
信義誠実の原則に反してはならない(民法第1条2項):(相手の信頼を裏切ってはいけない)

権利の濫用の禁止(民法第1条3項):(形式的には権利を有していても、他に合理的解決を図る方法があるにも係わらず、一方的に当該権利を主張してはならない)

これらの規定によって、何でも自由に法律行為(契約行為)をおこなうことができるとは限りません。

※これらもケースバイケースですので、お気軽に当事務所にご相談下さい。


自転車と道路交通法

 運転免許証を必要としないいわゆる普通の自転車ですが、道路交通法(第2条8号、11号、11号の2、第63条の3)では明確に車両のひとつと定義されています。

よって、当然に赤信号を無視してよいわけもなく、自転車自体の設計も道路交通法施行規則(第9条の2)で厳格に規定されています。

しかし、運転免許を必要とせず、義務教育の履修過程でも法学という授業はないこともあり、自転車を運転する一般の人たちは小学生から大人まで幅広いこともあって、なかなか道路交通法の細かい規定までは熟知していないのが実情なのではないかと思います。

当然、飲酒運転も法律で禁止されていますし、赤信号を無視して道路を横断してはいけません。

詳しいことは別ページで解説していきますが、法は知る者のみ守るという格言どおり、ある程度の理解は社会を生きていく上で必要であることは事実です。

当事務所では、街の法律家として法務全般に関することを幅広くご提供し、個人・法人問わず、なるべく幅広くご相談を承っていきたいと考えております。


2.<法律の世界でよく出てくる言葉>

推定する: ある事実関係を推察すること
        この段階ではまだ反証を挙げて否定できます
看做す : (みなす)一定の法律関係についてそうであると断定すること
        反証を挙げて否定することはできない


施行する: 公布された法令の効果を発動させること
適用する: 法令に規定される条項を実際の案件に対して発動させること
準用する: 法令の規定を引用する形で、他の事項に対して作用させること
例による: その法令又は制度全体をもって他の事項に対して作用させること


違法: 具体的な法令に反していること
不法: 概ね上記と同様に用いられることが多いがやや主観的な意味合いが込められている
不当: 法令に違反していないものの適切ではないこと


直ちに : 時間的即時性が最も強い
速やかに: その次に強い
遅滞なく: もっとも弱い



善意: ある事実を知らないこと
悪意: ある事実を知っていること
※世間一般に言う「悪意がある」とか「ある人の善意によって…」などの意味とは決定的に異なります。


限定列挙: 列挙された事由のみを指します
例示列挙: 列挙された事由は単に一例に過ぎず、他にも適用される例があります


解除: 原則として、契約時点まで遡って契約自体がなかったことになります
解約: 解約の時点から将来に向けて契約が終了し、過去への遡及効がありません


無効: 要件を満たさないため、その法律行為が効力を生じない状態
取消: 法律行為について、その効力を遡及的に無効とさせる旨の意思表示
撤回: 法律行為について、その効力をその時点から将来に向かって無効とさせる旨の意思表示


証明: 真実であるという心証に達した状態であり、もはや反駁が許されない
疎明: 一応確からしいという推測に達した段階であり、まだ反証によって覆る余地がある状態


選任: 一定の地位を持たない者に対してこれを付与すること
選定: 一定の地位を持っている者に対して、さらに一定の地位を付与すること
※例えば
株主総会で○○を取締役に選任し、取締役会で○○を代表取締役に選定した
という感じで、それぞれの言葉が使い分けられています。


過料: 行政法規違反に対する金銭制裁
科料: 刑法及び刑事訴訟法に基づく千円〜1万円未満の軽い金銭制裁(刑法第17条)
罰金: 刑法及び刑事訴訟法に基づく1万円以上の金銭制裁(刑法第15条)


届出: 特定の行為について、行政官庁に対して一定の事項を通知する行為
許可: 一般的に禁止されている行為を、特定の条件を満たした場合にその禁止を解き、適法に行えるようにすること

認可: 第三者の法律上行為を補充し、その法律上の効果を完成させること ※届出は、行政官庁に到達するだけでよいので、行政官庁側の諾否の判断をされることはありません
例えば、婚姻届、転出届、転入届などがこれにあたります。
※許可は、行政官庁にある程度の裁量権が認められています。
例えば、自動車運転免許許可、古物商許可、風俗営業許可などがあります。
※認可は、公共料金の値上げに対する認可など、行政官庁が認めることで有効となるものです。


原本: 作成者が最初に作成した確定した文書
正本: 広義では謄本の一種になりますが、原本と同一の効力を有するもの
謄本: 作成権限を持つ公務員が作成して認証したもの
抄本: 謄本のうち、その一部のみを記載したもの

写し: 当事者が作成した複製物
※例えば、みなさんの戸籍は原本が市町村役場に保管されていて、その謄本が交付されるわけです
一部の事項のみを記したものの場合は戸籍抄本と呼ばれるものが交付されます。
裁判の判決の場合は、原本に基づいて判決が言い渡され、正本が送達されます
途中で和解など調書によって終結した場合は謄本が送達されます。(民事訴訟法第255条2項)
しかし、謄本では強制執行ができないため、正本の送達も可能とされています。(民事訴訟規則第159条2項)


強行規定: 当事者同士で法律と異なる約束をしても法律の規定が優先されて当事者間の契約が向こうになる条項

任意規定: 法律と異なる契約を当事者間でした場合でもその契約の方が優先されるとする条項
※例えば、瑕疵担保責任に関する規定は任意規定と解されており、当事者間でこれを排除したり逆に除斥期間を長くしたりすることができます
さらに解説しますと、これは公序良俗に反する約定とはいえず、また、第三者の利害に係わることも原則としてないため、民法の三大原則の1つである私的自治の原則が妥当するからです
逆の例では、利息制限法に定める上限金利は強行規定と解されていて、これを上回る利息をもらう約束でお金を貸しても、その上回っている部分につき無効になります


消滅時効: 一定の期間、権利を行使しない場合に権利が消滅する制度

除斥期間: 上記と同じく一定の期間権利を行使しないと権利が消滅します
※より短い消滅時効の規定を総称して短期消滅時効と言います。
消滅時効は当事者が援用することによって効果を発揮しますが、除斥期間は当事者の援用の必要はありません。
また、時効には中断や停止がありますが、除斥期間には原則としてそれらはありません。
さらに、除斥期間経過による時効の成立の場合は効果が遡及(そきゅう)(=過去に遡ってなかったことになる)しないこととされています。


督促状: 簡単に言えば請求書のことです。


クーリングオフ: 
 法律上ではクーリングオフという言葉で規定されている条文はなく、特定商取引法、割賦販売法、保険業法、等でそれぞれ規定されている法律行為の総称なのですが、分かりやすく言えば、一定の期間内であれば無条件で契約解除ができる制度です。

主に、内容証明郵便によってクーリングオフの意思表示を行います。
消費者を保護することを立法趣旨として制度化されたものであるため、事業者である場合は適用外となるケースがあります。

クーリングオフができる期間の定めは8日〜20日程度と比較的短いため、速やかに内容証明による意思表示をする必要がありますので、これも専門家に相談の上でおこなった方がよいでしょう。

当事務所では数々の案件を消費者の立場からおこなってきました経験の積み重ねがありますので、何かお困りの際はお気軽にご相談ください。



内容証明郵便:
 わかりやすく解説しますと、郵便物の差出日付、差出人、文章の内容を郵便局が証明してくれる特別な郵便のことです。

配達証明郵便も併用して、その郵便物が配達された事実とその日付の証明を同時に得るのが一般的です。

これは、クーリングオフなど契約解除の意思表示、貸金の請求など、第三者にもそれらの意思表示や請求行為をおこなったことを証明する必要がある場合に用いられます。

主に、訴訟の前段階で用いるケースが多いですが、決まった様式に則って文書を記載しなくてはいけない決まりがあります。

また、正本1通と謄本2通の合計3通用意しなくてはいけないので、それらの規則に熟知していないと簡単に出すことは難しいのですが、当事務所ではこれまでに数多くの内容証明郵便による送付を手がけてきました。

内容証明によって通知すると、受取側は、関係がいよいよ敵対関係に突入したと感じることが一般的ですので、やみくもに出すべきではない場合もあります。

よって、送りたい場合でも、逆に、内容証明郵便を突然受け取って驚いてしまった場合でも、何らかのトラブルの際にはお気軽に当事務所にご相談頂ければと思います。



債務名義:
 厳密には民事執行法第22条にて規定されていますが、簡単に説明すると、確定判決、仮執行の宣言を付した判決、等、裁判所の力を行使して債務者に対して強制力を以って行使することができる文書のことを総称してこう呼びます。


強制執行:
 上記と同様、民事執行法に規定される公的権力を以って債務者に債権者に対する弁済をさせることを目的とした制度のことです。主に金銭執行と非金銭執行に分かれますが、非金銭執行の多くは不動産執行(土地や建物の明け渡し請求など)があります。


3.<法律の世界独特の表現について>

瑕疵(かし): 「欠陥」の意味


修補(しゅうほ): 「補修」「欠陥を直すこと」の意味
例えば、瑕疵の修補にかかる費用は請負人の負担とする…などとして使います
なぜ素直に補修と書かないのでしょうね


欠缺(けんけつ): 「欠けていること」「存在していないこと」
例:法の欠缺、意思の欠缺、など


思料(しりょう)する: 「思う」の意味


宥恕(ゆうじょ)する: 「許す」の意味


郵券(ゆうけん): 「郵便切手」のこと


競売(けいばい): 文字通りの意味 ※「きょうばい」とは読みません


遺言(いごん): 文字通りの意味 ※「ゆいごん」とは読みません


兄弟姉妹(けいていしまい): 文字通りの意味 ※「きょうだいしまい」とは読みません


従前どおり: 「以前のとおり」「変更はない」の意味


懈怠(かいたい): 法律において実施すべき行為を行わないまま放置している状態
例えば、登記懈怠、届出懈怠などがあります。


甲乙丙丁戊己庚辛壬癸: 裁判の世界で登場人物に順番に振り当てられていく呼称
※女性の場合は「甲女」「乙女(おつじょ)」「丙女」となっていきます


乃至(ないし): 「〜」の意味
※「1月1日乃至1月7日」は「1月1日〜1月7日」という意味になります


蓋し(けだし): 「なぜならば…(○○だからである)」の意味
※理由を説明する際に、「蓋し・・・だからである」という感じで使われます


縷々(るる): 「つまらないことをぐだぐだと」の意味 ※「被告は縷々主張するが…いずれも失当である」のように使われます


苟も(いやしくも): 「仮にも」の意味
※「苟も言論の自由を不当に制限することとならないよう慎重な配慮が求められる」のように用いられます


乖離(かいり): 「隔たりがある」「離れている」状態
例えば、甲と乙の認識には著しい乖離があり…、まずは事実確認の必要性が云々などと使われます。


俄か(にわか)には措信(そしん)し難い: 「ちょっとすぐには信用できない」の意味


然るに(しかるに): 本来は「しかし」の意味ですが、必ずしも逆説的な文面の頭にくるとは限りません


欺罔(ぎもう)する: 人を欺き、騙すこと


奇貨(きか)として: 「契機にして」「いいことに」「口実にして」「好機とみて」
例えば、通帳を所持管理できる立場にあることを奇貨として…のように使われます


爾後(じご): ある出来事や行為の後という意味で、「事前」の対です(=事後)。


こうした普段見慣れない言葉が出てくると、ちょっと驚いてしまいますよね。
民法や商法など、法律もどんどん読みやすい現代語に改正されていきましたし、今後はこうした言葉も少なくなっていくと思います。
しかし、格調高い言葉として、裁判所に提出する書類では今も実際に使われています。
よく分からない用語が使われている書面で、その内容をよく理解できないまま返事をしてしまうと、不利になってしまうこともあります。
そうしたときは、やはり専門家に相談して、きちんと内容を理解した上で、適切に対処していくことが安全です。