遺言書

はじめに
1)遺言とは?
2)遺言書の書き方は?
3)遺産の分配方法は?
4)遺言書がない場合は?
5)遺言書を書くメリットは?
6)遺言書を書く必要のある人は?
7)遺言書の種類
 メリット・デメリットは?
8)遺言書に記載できることは?
9)法的に効力があるものは?
10)法的な効力はないが希望として記載しましょう
11)遺言書作成の留意点は?
12)公証役場での公正証書作成手数料は?
13)遺言書は公正証書にしましょう




はじめに

早速ですが、遺言書と聞くと
「まだまだ若いし健康だからいずれ書けばいい」
「うちは仲が良くもめないので大丈夫」
「もめるほど財産がないから大丈夫」
などと言われる方が多数いらっしゃいます。

しかし、本当に大丈夫なのでしょうか?亡くなられた後の手続きは、相続手続です。実は「相続」と書いて「争族」と言われています。
これはどうしてでしょうか?
仲のいい兄弟だったのが、相続手続で骨肉の争いとなることも、少なくありません。また、相続人は自分だけだと思っていたら、他にも相続人がおり財産を分けなければならなくなったということもあります。このようなことにならないためにも、遺言書を作成しておいたほうがよろしいかと思います。
では、なぜ遺言書を作成しておいたほうが良いのか、ご説明いたします。


1)遺言とは?

人が自分の死後のために残す最後の意思表示です。
遺言は、遺言者の死後に効力を生ずるものですので、その遺言が真意に基づくものなのか遺言者に確認することができません。しかし、この遺言は被相続人(遺言者)の最後の意思表示であり、尊重すべきことは当然です。
そこで、遺言作成に一定のルールを定めて、遺言がその一定のルールに従って作成される限り、その内容の実現を法的に保障することとしています。
これが遺言制度です。

遺言書を作成する意味
①遺言は遺言者の最後の意思表示であり、これを残すことにより遺言内容の実現を法的に保障されます。
②遺言で各相続人への財産の配分などを、きちんと調整しておけば、相続人間の紛争の防止に役立ちます。


 

2)遺言書の書き方は?

では、遺言書をどのように書いたら良いのでしょうか?
ここでは、遺言書の書き方についてご説明致します。



①必ず自筆で記載すること
※パソコン、ワープロや他人に代わりに書いてもらうなど無効。

②必ずボールペンや万年筆等で
 記載すること
※鉛筆等、消しゴムで消して書直しができるようなもので書くと無効。

③タイトルは「遺言書」と記載すること

④必ず単独で作成すること
※夫婦等の共同での遺言書は無効。

⑤名前は必ず戸籍記載通りの姓名で記載すること
※ペンネーム等通常無効。

⑥不動産や預貯金はなるべく特定させること
※不動産の場合は、登記簿謄本記載通りに記載し特定させると良い。
(私道がある場合は忘れずに!)
※預貯金の場合は、銀行名、支店名、口座番号を記載し特定させると良い。

【注意点】
不動産、預貯金について詳細に記載する場合、数字等1番(1字)でも間違えると別の不動産、別の銀行口座となってしまいますので、記載するときは何度も見直して間違えないように注意してください。

⑦必ず作成した日付を記載すること
※大安吉日等の記載は無効。

⑧署名、捺印する。
※名前の横に生年月日を入れておくと良い。
※印鑑は、認印でも可能だが、できれば実印の方が良い。

【注意点】
Ⅰ.不動産の場合
上記⑥にて記載の登記簿謄本は、お近くの法務局で取得します。
土地には住所の他に「地番」というものがあり、建物には「家屋番号」というものがあります。これらがわからない場合は、その不動産が存在する管轄の法務局にて取得してください。
※取得方法がわからない場合や取得のご依頼に関するお問合せはお電話ください。

Ⅱ. 「譲る」「渡す」「継がす」などの曖昧な表現はやめましょう。
相続人への場合は、「相続させる」と記載します。
相続人でない方へは、「遺贈する」と記載します。

Ⅲ.「誰に」「何を」「どのくらい」をきちんと書きましょう。
間違いの例⇒ A男にXX財産を二分の一相続させる
正解の例 ⇒長男A男にXX財産二分の一相続させる
【注意点】
「長男A男」の後ろに生年月日を入れたほうが良いと思いますが、万が一、この生年月日を間違えて記載してしまった場合、問題になる場合がありますので注意して記載してください。

Ⅳ.書き間違えた場合は、もう一度書き直したほうが良いです。

Ⅴ.遺言書が複数枚になった場合は、ホッチキスでとめてページと
 ページの間に契印を押しましょう。


■契印とは?
遺言書が1枚の書面で完結し、遺言者の署名・捺印とが同一のページもしくは1枚の紙に表示されている場合には、相続人によって改ざんされる危険性は通常少ないといえるでしょう。しかし、遺言書が複数ページにわたり、署名・捺印と遺言内容とが別のページに記載されているような場合には、一部が勝手に差し替えられたりするなどして、遺言書の内容が勝手に変更されてしまう危険性があります。そこで、このようなことを防止するために、遺言書が複数ページに渡るときには、各ページに契印を押して、その一体性を確定させる方法がとられています。
これを契印といいます。

■契印の押印方法は?
遺言書のページの見開き部分に、両ページにまたがる形で押印します。
なお、押印する印鑑は、遺言書に署名・捺印した同じ印鑑で押印してください。
一つの印影が両ページにまたがって表示されることになります。

Ⅵ.遺言書を封筒に入れてください。
1)遺言書を封筒に入れる。
2)封をする。
3)封筒の表には「遺言書」と記載。
4)封筒の裏には「開封せずに家庭裁判所へ提出し、検認を受けること」と
 記載し、日付と署名・捺印、封印をしましょう。
※封筒に押印する印鑑は、遺言書に署名・捺印した印鑑と同じ印鑑で
 押印しましょう。

 

 

 


3)遺産の分配方法は?

1.遺言による場合
2.遺産分割協議による場合
→遺産分割協議とは、共同相続人のうち誰がどれだけの遺産を相続するかを決める相続人間での協議のことです。
※相続人同士で話し合いをして、協議がまとまれば問題はないのですが、
 なかなかまとまらないのが現実です。

3.法定相続割合による場合
→遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらない場合、民法の定めたルールに従って相続することです。
誰が相続人となり、どの程度の遺産を相続できるのかを民法により画一的に決定します。
※したがって、相続人間の具体的事情をなんら考慮しないため問題が
 多いのが現実です。


【法定相続のルール】
相続人となれるものは、
配偶者(夫・妻)
→配偶者は常に相続人となる。
①子供
②親
③兄弟姉妹
※①~③は、前者が存在すれば後者は相続人にならないという関係にあります。
したがって、 ①子供がいない場合に②親が相続人になり、①、②がいない場合に③兄弟姉妹が相続人となります。
その相続分の割合は以下のとおりです。

  配偶者 子供 兄弟姉妹
1 1/2
1/2    
2 2/3
1/3  
3 3/4
  1/4





4)遺言書がない場合は?

1.遺言書がある場合は、遺言の指定により分配されます。
2.遺言書が無い場合は、以下となります。

①相続人間の協議(遺産分割協議)により分配
②法定相続割合により分配

5)遺言書を書くメリットは?

◎遺言は法定相続に優先します。
(遺言者の意思を尊重するため、遺産争いのトラブルを未然に防げます

1)法定相続人でない人にも財産が残せる。
→ 内縁の妻、孫、長男の嫁、世話になった友人 等
2)法定相続分と異なる配分ができる
→ 同居している長男に多く残せる。妻に全部残せる。
3)①誰に②何を③どのくらい と具体的に配分を指示することができる


6遺言書を書く必要のある人は?

1)子供がいない夫婦
→ 夫や妻に全部残したい。(配偶者の兄弟姉妹にはあげたくない)
※遺言書がないと被相続人(亡くなられた方)の兄弟姉妹も、相続人となってしまいます。

2)複数の子供がいる夫婦
→ 同居の長男に多く残したい。
長女には生前マンションを買ってあげたので、その分減らしたい。
(兄弟間の公平)

3)相続人がたくさんいる人
→ 配分を具体的に指示したい。

4)内縁の夫、妻がいる人
→ 世話になった内縁の夫、妻の老後のために残してあげたい。
※遺言書がないと内縁の夫、妻は相続人ではないため残せません。

5)独身で身寄りのない
→ 世話になった友人や母校、可愛がっている甥、姪にあげたい。
※遺言書がないと相続人がいない場合の遺産は国の所有となってしまいます。

6)配偶者と離婚調停中もしくは別居中の人
→ 配偶者にはあげたくない。

7)再婚した人
→ 前妻との間の子に迷惑をかけた分あげたい。
→ 再婚相手の連れ子(養子縁組していない場合)に残してあげたい。

8)病弱もしくは障害者の家族がいる人
→ 面倒をみる人を決めておきたい。

9)行方不明の相続人がいる人
→ 行方不明の人の分も含めて決めておきたい。


7)遺言書の種類 メリット・デメリットは?

【自筆証書遺言】

メリット
①手軽に書ける
②費用がかからない
③遺言の内容や存在を秘密にできる
④証人がいらない

デメリット
①形式不備で無効になる可能性あり
②偽造、紛失、盗難のおそれ
③遺言書が発見されない可能性あり
④遺言能力等について異議が出される可能性あり
→(例) 認知症等で判断能力のない方
⑤開封に家庭裁判所の検認手続が必ず必要
→ 検認手続する前に開封した場合、5万円以下の過料に処されてしまうので、注意が必要です。



【秘密証書遺言】
(遺言の内容を秘密にして、遺言の存在のみを公証人に証明してもらう)

メリット
①遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を明らかにできる
②偽造の恐れがない

デメリット
①費用がかかる
②形式不備で無効になる可能性あり
③紛失、盗難のおそれ
④遺言書が発見されない可能性あり
⑤開封に家庭裁判所の検認手続が必ず必要



【公正証書遺言】

メリット
①公証人が作成するので無効になりにくい
②原本は公証役場にて保管されるので、偽造、紛失、盗難の恐れがない
③遺言が本人の意思でなされたものであることが認められやすい
④家庭裁判所の検認手続が不要

デメリット
①費用がかかる(後記参照)
②遺言の内容が公証人、証人に知られる
→(相続人に知られない対策) 証人は法律家へ依頼


8)遺言書に記載できることは?

どんなことでも記載することができます。


9)法的に効力があるものは?

遺言書にどんなことでも記載出来ることが分かりました。
では、遺言書を記載するにあたり、法律的に効力があるものはどんなものがあるのでしょうか?
以下の表に記載いたします。

  内容 説明
1 遺贈 相続人問わず財産を贈ること。法人でも可。
2 子供の認知
婚姻届出をしていない男女の間に生まれた子供を認知すること
3 未成年後見人の指定
子供が未成年者のときの後見人の指定
4 相続人の廃除または
廃除の取消し
相続人となる人の相続権を剥奪したり、その取消しをすること
5 相続分の指定 相続人ごとに法定相続分と異なる相続分を指定。また、その指定することを第三者に委託すること
6 遺産分割方法の指定 遺産分割の方法の指定や、その指定を第三者に委託すること
7 遺産分割の禁止 5年以内の遺産の全部又は一部の分割を禁止すること
8 相続人間の担保責任の指定 相続人間の担保責任の指定
9 遺言執行者の指定 遺言執行者の指定、またはその指定を第三者に委託すること
10 遺贈の減殺方法の指定 減殺請求されたときの減殺方法を指定すること



10)法的な効力はないが希望として記載しましょう

法的に効力はなくても、遺言者としてどうしてもこのようにして欲しい!といった希望があるのであれば、記載しましょう。
例えば、遺言者が遺言の中に「身内だけの静かな葬式にしてほしい」といった記載があった場合、皆様はどのような葬式にするでしょうか?

皆様は以下の①でしょうか?②でしょうか?
① そうは言っても会社社長だったし、そんなわけにはいかないよ
② 親父が遺言書にまでそう書いているのだから親父の意思通りにしてあげよう
・・・どちらの主張もあると思います。
ただ、遺言書にまで記載されていると無視するわけにはいきませんよね?したがって、どうしてもこのようにして欲しい!といった希望があるのであれば、是非記載しましょう。
以下に例を上げておきます。
1)自分の葬儀の内容やお墓について希望がある場合
2)献体や臓器提供をしたい場合
3)尊厳死宣言をしたい場合
4)ペットの面倒をみてもらいたい場合 等





11)遺言書作成の留意点は?

心身ともに健康なうちに作成しましょう
意思伝達に支障が、出てから作成した遺言書は無効になる可能性あり
※気が変わった場合、何度でも書き直しが出来ますので
 健康なうちから書いておきましょう。

全財産を具体的に記載特定し、
 個々の財産の割付を具体的に明示しましょう
金融資産の場合は、金額ではなく割合で配分しましょう。

遺言執行者を指定しましょう
※遺言執行者は、遺言者に代わって遺言の内容を実現させる任務を行う者で、
 遺産分割手続が円滑に運びます。

◎遺言書を作成するうえで
遺言者は、○○このようにしてくれ!といった、要は実現して欲しいという目的で遺言書を書くわけです。しかし、書いた遺言書が相続人間で不平等なものだったとしたらどうなるでしょう?少なくしかもらえない相続人は、当然ながらブーブー文句を言います。
そうすると、兄弟姉妹等相続人の間で今後不仲になりたくないと思う相続人が出てきます。その相続人が相続人同士で調整をはかり、折れる形で相続手続が行われてしまいます。すると、遺言者の希望通りに財産が配分されなくなってしまいます。したがって、遺言者の書いた遺言書通りに実現してくれる遺言執行者を決めておいたほうがよろしいかと思います。この遺言執行者は、できれば利害関係のない第三者である法律家に依頼することをお勧めいたします。






12)公証役場での公正証書作成手数料は?

財産の価額 公証役場手数料
~100万円 5,000円
~200万円 7,000円
~500万円 11,000円
~1,000万円
17,000円
~3,000万円
23,000円
~5,000万円 29,000円
~1億円 43,000円

※別途遺言手数料11,000円、正本・謄本交付手数料、用紙代あり。
※相続人一人毎に計算
例) 妻 4,000万円、子A 2,000万円、子B 1,000万円の場合
29,000円(妻)+23,000円(A)+17,000円(B)+11,000円=80,000円



 


13)遺言書は公正証書にしましょう

以上みてきたように、遺言書が自筆証書遺言だった場合、
せっかく遺言書を作成したはずが、
「無効になった」、
「発見されなかった」、
「相続人同士で争いになった」、
では、とても悲しく悔やんでも悔やみきれません。
遺言書を書いて相続人たちに財産を遺そうとしているにもかかわらず、その思いは現実とならないのです。遺言者のこのようにしたいという意思を有効確実にするために、皆様には是非、公正証書遺言をお勧めいたします。

そのときには是非、
行政書士である私「田中 良明」をご指名頂ければと思います。
ご依頼者の手足になって迅速にご対応致します。


遺言書の費用は以下のとおりです。

●遺言書の作成サポートパック(公正証書
 105,000円~(別途ご相談 諸費用別

遺言書の作成サポートパック(自筆証書)
 84,000円~(別途ご相談 諸費用別)

遺言書の起案及び作成指導
 21,000円~(別途ご相談 諸費用別)

公正証書遺言の証人のお引き受け
 52,500円~(別途ご相談 諸費用別)

遺言執行者のお引き受け
 315,000円~(別途ご相談 諸費用別)


ご質問等ございましたら、遠慮なくご相談ください。
お電話、お待ちしております!


2020年01月21日