離婚問題

1)法律上の「結婚」について
2)離婚とは
3)離婚するために
 決めなければならないこと
4)損をしないための
 財産分与と慰謝料
5)子どもをめぐる問題と法律
6)実際の離婚の手続きについて
7)離婚後の年金について
8)離婚に関するQ&A



1)法律上の「結婚」について

「離婚」について解説する前に、「結婚」の法律的な意味を振り返ってみましょう。民法では、結婚のことを「婚姻」といいます。
婚姻が成立するためには、

〇形式的要件
〇実質的要件
を満たさなければなりません。



〇形式的要件
戸籍法の定めるところに従い、婚姻届を市区町村長に提出する意思

〇実質的要件
1)当事者である男女双方に婚姻をする意思、夫婦関係を成立させようとする意思があり、その意思が合致していること
2)男性は18歳、女性は16歳の婚姻年齢に達していること
3)重婚でないこと
4)女性の再婚については、再婚禁止期間
 (前婚の解消、または取消の日から6か月)を経過していること
5)近親者間の婚姻でないこと
6)未成年者の婚姻では父母の同意があること
7)詐欺、強迫によるものではないこと
婚姻届が受理されると、夫または妻が筆頭者として新しい戸籍が作られます。
では、上記要件が欠けた場合、どうなるのでしょうか?

以下に表にしてまとめてみました。

なお、注意をしたいのは、実質的要件の⑥未成年者の婚姻では父母の同意があることです。未成年者の婚姻に「父母」の同意を必要とした趣旨は、思慮分別の不十分な若年者が軽率に結婚して不幸にならないように未成年者に対して最も愛情と理解が深い親が関与して未成年者の結婚を保護するためです。しかし、父母の同意がないのに誤って婚姻届が受理された場合、その婚姻は有効に成立し、後に取消すことが出来ません。
(最高裁判決 昭和30.4.5)
理由として、
民法744条が737条を準用していないし、父母の同意は受理要件にすぎないためとしています。
これは、婚姻要件の
〇婚姻の届出意思、〇婚姻意思の合致
が存在し、家族法の特徴である

〇本人の意思の尊重、〇事実状態の尊重
を重要視しているためと思われます。


親族の定義、婚姻の成立およびその無効、取り消しに関する民法は次のような項目になります。



第4編 親族

第1章 総則

親族の範囲
第725条 次に掲げる者は、親族とする。
1.6親等内の血族
2.配偶者
3.3親等内の姻族

親等の計算
第726条 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2.傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下るまでの世代数による。

縁組による親族関係の発
第727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

離婚等による姻族関係の終了
第728条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2.夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

離縁による親族関係の終
第729条 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。

親族間の扶け合い
第730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

第2章 婚姻

第1節 婚姻の成立
第1款 婚姻の要件

婚姻適齢
第731条 男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。

重婚の禁止
第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

再婚禁止期間
第733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2.前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一.女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなっかた場合。
二.女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合。

近親者間の婚姻の禁止
第734条 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。

2.第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

直系姻族間の婚姻の禁止
第735条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。

養親子等の間の婚姻の禁止
第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

未成年者の婚姻についての父母の同意
第737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。

2.父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。

成年被後見人の婚姻
第738条 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。

婚姻の届出
第739条 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2.前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

婚姻の届出の受理
第740条 婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

(外国に在る日本人間の婚姻の方式)
第741条 外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前2条の規定を準用する。

第2款 婚姻の無効及び取消し

婚姻の無効
第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

1.人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
2.当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

婚姻の取消
第743条 婚姻は、次条から第747条までの規定によらなければ、取り消すことができない。

不適法な婚姻の取消し
第744条 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。

2.第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

不適齢者の婚姻の取消し
第745条 第731条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。

2.不適齢者は、適齢に達した後、なお3箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。

再婚禁止期間内にした婚姻の取消し
第746条 第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。

詐欺又は強迫による婚姻の取消し
第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

2.前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

婚姻の取消しの効力
第748条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2.婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

3.婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

離婚の規定の準用
第749条 第728条第1項、第766条から第769条まで、第790条第1項ただし書並びに第819条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。

第2節 婚姻の効力

夫婦の氏
第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

生存配偶者の復氏等
第751条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

2.第769条の規定は、前項及び第728条第2項の場合について準用する。

同居、協力及び扶助の義務
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

婚姻による成年擬制
第753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

夫婦間の契約の取消権
第754条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


2)離婚とは

離婚とは、一旦有効に成立した婚姻について、将来に向かってその効力を消滅させることです。



離婚についての民法次のような項目になります。



第4節 離婚
第1款 協議上の離婚

協議上の離婚
第755条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

婚姻の規定の準用
第764条 第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。

婚姻の規定の準用
第765条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

2.離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

離婚後の子の監護に関する事項の定め等
第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

3.家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

4.前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

離婚による復氏等
第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2.前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

財産分与
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2.前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。

3.前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

離婚による復氏の際の権利の承継
第769条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。

2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。

第2款 裁判上の離婚

裁判上の離婚
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2.裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

協議上の離婚の規定の準用
第771条 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。



【趣旨】
一旦有効に成立した婚姻について、婚姻成立後に発生した事由に基づき将来に向かってその効力を消滅させる制度として、
①協議上の離婚(第763条~769条)と②裁判上の離婚(第770条、771条)
を認め、その要件および効果を定めて法律関係を明確にしています。

Ⅰ)協議上の離婚
当事者同士で話し合いをして、
①形式的要件 離婚の届出意思
②実質的要件 離婚意思の存在
があれば、市区町村役場へ離婚届を提出、受理されることによって、
離婚理由がたとえどのような理由であったとしても離婚することができます。
これを、「協議離婚」といい、実際に離婚する夫婦の90%以上が協議離婚によって離婚しています。

【判例】
②の実質的要件の「離婚意思」とは、離婚届出に向けられた意思で足り、社会通念上の共同生活関係を解消する意思である必要はありません。
(最高裁判例 昭和38.11.28)
①強制執行を免れる目的での離婚
②氏の変更目的での離婚
③生活扶助を受ける目的での離婚
も全て有効(OK)です。
(最高裁判例 昭和44.11.14等)

Ⅱ)裁判上の離婚
夫か妻のどちらかが離婚したくない、あるいは財産分与、慰謝料、養育費などの金銭的な問題や子供の親権といった、離婚する上での条件についてもめた場合は、協議離婚というわけにはいきません。

■調停離婚
二人の間で話合いがつかない場合は、まず家庭裁判所で離婚の調停をしなければなりません。
これを調停前置主義といいますが、家庭裁判所で調停委員をまじえて話し合いを行い、話がまとまれば離婚することができます。
これが「調停離婚」です。


■審判離婚
調停によっても話がまとまらず、調停委員が審判にまわしたほうが良いと判断した場合、あるいは離婚には応じるが、金銭問題で解決がつかないといった場合には、家庭裁判所が審判をする場合もあります。
この審判による離婚を「審判離婚」といいます。
審判は、文字通り家庭裁判所が「審判を下す」のですから、話し合いは行われませんが、審判の結果に納得がいかなければ不服を申し立てて訴訟を起こすことができます。


■裁判離婚
調停で話合いがつかない、裁判所の審判にも納得がいかない、ということになれば、最終的には離婚訴訟を起こして離婚の請求をすることになります。
これが「裁判離婚」です。ただし、訴訟を起こす場合には、 「法定離婚事由(法的に定められた離婚事由)」がなければなりません。

法定離婚事由を表にまとめてみました。


協議離婚、調停離婚、裁判離婚の流れは、以下の通りになります。


■離婚届を受理してもらわなければ成立しない
協議離婚の場合の離婚届には、夫と妻の2人の署名押印のほかに、証人を2人たてて署名押印してもらう必要があります。
これを、市区町村役場の戸籍係に提出して受理されれば、離婚が成立します。
調停・裁判離婚の場合は、調停成立の日または判決確定の日から10日以内に裁判所関係書類とともに届け出なければなりません。




3)離婚するために決めなければならないこと

離婚は、精神的にも肉体的にも大変な労力をしいられます。
実際に離婚に踏み切ったのなら、どんな作業がまっているのかをみていきまょう。





■結婚前の氏にするか、現在のままの
 氏にするか
結婚して苗字を旧姓に戻すことを「復氏」といいます。
離婚後も復氏せずに現在のままの氏(結婚中の苗字)を使用することも可能です。
もし、子供がいる場合は、子供の氏についても手続きが必要なこともあります。


■どちらが子供を引き取るか
夫婦の間に子供がいて、その子供が未成年である場合は、どちらが子供を引き取るか、つまり、どちらが子供の親権者になるかを決めなければなりません。
親権者は、あくまで子供の身の上を第一に考えて決定されるべきものですので、親の一方的な感情や都合で親権を主張することは出来ません。


■財産分与、慰謝料はどのようにするか
財産分与は、たとえどのような理由で離婚するのであれ、堂々と請求できるものです。
専業主婦で収入を得ていなかった場合でも請求できます。慰謝料については、客観的な基準などはなく、ケースバイケースで。決められます。
財産分与は、離婚から2年以内、慰謝料は3年以内に請求しなければなりません。


■子供の養育費をどのようにするか
子供の養育費を月にいくら、いつ、どのような方法で支払うかなどを詳細に決めておく必要があります。これは、後々のトラブル防止のため、きちんと書面、できれば公正証書にしておくことをお勧めいたします。

→分割協議書
→分割協議書の公正証書


■引き取らない方の親は、どのように子供と会うか
子供を引き取らなかった方の親が、離婚後に子供と会うことを「面接交渉」といいます。通常は、引き取らなかった方の親には面接交渉権があり、別れた後も子供と会うことが認められています。
いつ、どのくらいの時間、どんな場所で会うのかなどを取り決めしておきましう。これも、後々のトラブル防止のため、きちんと書面、できれば公正証書にしておくことをお勧めいたします。

→分割協議書
→分割協議書の公正証書


■相手の財産がどのような形で、いくらくらいあるのか
預貯金はいくらあるのか、不動産はどのくらいもっているのか、また有価証券、会員権(ゴルフやレジャークラブなど)、保険などについても加入状況を綿密に調べておく必要があります。
骨董品や絵画などの美術品も財産に含まれます。
財産分与の際にこれらの財産状態を把握しておくことが重要です。

離婚で決めておかなければならないことは、以下の通りになります。

公的扶助も検討する
子供を抱えて離婚した女性のために、児童扶養手当や母子福祉資金貸付という低金利融資制度もあります。こうした国の援助を出来る限り利用すべきです。
社会的に弱い立場にある人々に対して、国家・社会はさまざまな救済手段を講じています。そうした福祉政策と国民をつなげる窓口の役割を果たしているのが、
「福祉事務所」です。

福祉事務所は、全国各地の自治体で設けられていますので、地元の市区町村に問い合わせてみてください。
特に、母子家庭世帯のために子供の学費などを貸してくれる「母子福祉資金」子の扶養に必要な手当を給付してくれる「児童扶養手当」病気になったときのための「医療費助成制度」住宅問題を解決するための「母子生活支援施設紹介」
といった各種のサービスが用意されています。
また、離婚や家庭内の問題など、女性が直面するさまざまな悩みについては各自治体にある「婦人相談センター」で面接や電話による相談を受付しています。

《婦人相談センター》
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/02.html

「児童相談所とは」
児童相談所とは、子供の抱えるさまざまな問題について、子供本人や家族などからの相談に乗り、その解決のために各種の対応をするために設けられた機関です。管轄は厚生労働省で、児童の福祉と健全な育成のために制定された「児童福祉法」に基づいています。

《児童相談所》
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv30/zisouichiran.html


■その他健康保険・年金の届出、免許証、郵便局への住所変更届など
通常夫が会社員で妻が専業主婦の場合、妻は自動的に夫の社会保険に加入するシステムになっていますが、離婚後は妻自身が国民健康保険に加入する手続きをとらなければなりません。年金についても同様です。
いずれも強制加入ですので、役所の担当窓口に出向いて必要な手続きをしてください。
運転免許証を持っている場合は、書替えの手続きが必要です。
姓が変わる場合には、名前の変更手続きを、離婚後の住所が変わる場合には、移転地への変更手続きが必要です。手続きは、公安委員会の窓口で受け付けています。その他、郵便局への住所変更届、パスポート、生命保険、銀行預金などの名前や住所の変更手続きが必要になります。

(離婚に際して考えておく項目)

戸籍 〇婚姻前の戸籍に戻る
〇新戸籍を作る
財産 財産分与(夫婦で築いてきた財産の清算)
子供 〇どちらかが親権者になる
〇面接交渉権を認めるか
〇養育費についての取り決め
親族関係 相手の親族との婚族関係は終了
その他 慰謝料(離婚原因を作った者が支払う)

■再婚禁止期間
離婚後は、男性はすぐにでも再婚できますが、女性は離婚から6ヶ月間は再婚できません。(民法第733条1項)
これは、「女性が離婚後すぐに再婚して妊娠した場合、前の夫の子か後の夫の子かがわからなくなる」という考え方から定められたものです。


第733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2.女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。




民法は、「婚姻成立の日から200日後または婚姻解消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定し、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」と規定しています。(民法第772条)
これを嫡出推定といいます。


(嫡出の推定)
第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。



例外的に女性が6ヶ月を待たずに再婚できる場合があります。
①離婚が成立する前に懐胎していた場合
離婚した夫とよりがもどって再婚する場合
③夫が3年以上行方不明になっている(法定離婚事由)の場合
④離婚後優生手術を受けて妊娠不能である場合(医師の証明書必要)



■離婚前の別居
実際に離婚に踏み切る前に、しばらく別居して様子をみるという方法をとる夫婦は数多くいます。別居によってバランスがとれ、そのまま夫婦関係を継続できたケースもあれば、冷静に離婚するための冷却期間になったというケースもあります。
ただし、相手の意向を無視して別居を強要したり、同居を拒否したりすれば、後で裁判離婚になったときに不利になる場合があるので、お互いがきちんと納得の上で別居を決めるべきです。

専業主婦で夫に経済的に依存していた妻の場合、「夫婦間の協力扶助義務あるいは婚姻費用分担義務(夫婦生活を送る上で必要な費用の分担)」に基づいて、妻は夫に対して別居中の生活費を請求することができます

ただし、妻みずからが不貞(不倫)によって別居生活をしている場合や、妻が夫に対して離婚届をつきつけて一方的に別居をはじめた場合などでは生活費を請求することはできません。請求する側に夫婦関係を破綻させた責任がある場合、権利の濫用として生活費の請求は認められません。


■離婚前の別居実際
別居期間中に、相手の態度や子供の変化を見つめて冷静に今後のことを考えましょう。
例えば、経済的に一人で子供を育てていくことができるのか、精神的に自立していけるのか、など自問自答してみましょう。その結果、離婚すると判断した場合は、離婚手続きがスムーズに進むよう、次のことをしておきましょう。


〇冷静に今後のことを考える
〇就職や資格取得の準備をする
〇子供の転校等の準備をする
〇離婚後の住居を確保する
〇離婚条件について法律家に相談する
〇公的援助制度について調べる




4)損をしないための財産分与と慰謝料

財産分与とは?
財産分与は、夫婦で婚姻期間中に築き上げた共有財産の清算です。
離婚にともなって支払われる金銭を「離婚給付金」といいます。
離婚給付金には、
〇財産分与、〇慰謝料、〇養育費
があります。

法律上、夫婦が婚姻中に築いたお金、財産等は、夫婦2人のものと考えます。
例えば、妻は専業主婦で働いておらず、夫が働いて収入を得て生計を立てている場合、夫の稼いだ収入は2人のものです。
なぜでしょうか?
あくまで夫が収入を得られるのは、妻の協力、いわゆる「内助の功」があるからだという考え方に基づくからです。したがって、妻がたとえ収入を得ていないとしても、夫の得た収入は全て「夫婦が共同で形成したもの」と判断されます。
よって、専業主婦で収入のなかった妻からでも財産分与を主張することができます。これは、逆の場合でも同様です。(夫が専業主夫で妻が働いて生計を立てている場合)
離婚するときは、婚姻期間中に得た夫婦共有財産は清算しなければなりません。


■扶養的財産分与とは?
財産分与請求権の内容には、3つの要素があるといわれています。
〇夫婦の財産関係の清算
〇離婚に伴う損害の賠償
〇離婚後の生活に困窮する配偶者の扶養
です。
ここで取り上げるのは、「離婚後の生活に困窮する配偶者の扶養です。
例えば、専業主婦をしていた女性が離婚するケースでは、当然のことながら生活が不安定になることは否めません。しかし、妻が家庭に専念していたからこそ夫は収入を得ることが出来たわけですから、別れた妻が離婚後に自分の力で生活できるようになるまでは、夫は妻の生活の保証をするのが公平であると考えられています。これを「扶養的財産分与」といいます。
扶養的財産分与では、夫自らの固有財産や収入を割いてでも、夫は離婚した妻に財産を与えるべきであるとされています。
しかし、妻は、一生涯全面的に扶養されて生活ができるというわけではありません。金額も支給される期間も相当な金額、相当な期間とされています。


■財産分与の請求はいつまでできる?
離婚の財産分与の請求ができるのは、離婚のときから2年以内に行わなければなりません。

財産分与に関する民法は、以下の通りです。


財産分与
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2.前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。

3.前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。



また、2年以内に請求しないと財産分与の請求権がなくなるばかりでなく、その財産が請求不可能な状態になってしまう可能性もあります。
「貯金を使われてしまった」、「マンションを勝手に売られてしまった」
等が典型例です。
したがって、2年以内であっても、お金の問題は後回しにせず、早いうちに手を打っておくべきです。なお、離婚後に相手が稼いだ財産や、遺産相続などで得た相続財産に関しては、財産分与の対象外です。
あくまで相続財産の対象は、
「離婚のときまでに協力して築いた財産」、「婚姻期間中に築いた財産」
です。


財産を調べておこう
財産分与の請求をする側は、相手が所有する財産の状況をしっかりと把握しておくべきです。
例えば、
〇預貯金(銀行名、支店名、口座番号、金額)
→コピーを取っておくとよい
〇不動産(土地、建物)
→登記簿謄本を取得しておくとよい
〇株(銘柄、株式数、証券会社名)
→証券会社から送られる書類のコピーを取っておくとよい
等です。

ただ漠然と知っているだけでは、請求できるものもできなくなってしまいます。
「もっとあるはずだ」と根拠なくつめよっても、相手に否定されたり隠したりされたらそれまでです。
具体的に、詳細に、特定したものを相手に突き付けましょう。
銀行や証券会社は、たとえ配偶者であっても本人でないと開示してくれません。
したがって、離婚を決意したころから日々調査しておくことをお勧めいたします。
財産分与と慰謝料は以下のような表にしてみました。

財産分与の対象となるのは?
財産分与の際に、何が対象となる財産について知っておきましょう。

1)財産分与の対象となるのは?
○預貯金
○有価証券
○会員権
○美術品や骨董品(価値の高いものに限る)
○電化製品や家具(新品レベルの物)
○退職金

2)財産分与の対象ではないものは?
結婚前にためておいた預貯金や、結婚前に実家から貰った財産に関しては、それぞれの固有資産です。ただし、相手の協力があって固有資産を維持できた場合は、残っている預金は清算の対象になる可能性があります。
※不動産を分与する際に注意しましょう。

○所有権の移転登記をしましょう。
 不動産の権利は、登記をしてはじめて確定的に自分のものとなります。

○借地権や借家権の譲渡は地主、家主の了解を得ましょう。
 借地上に建てられた不動産を譲り受ける場合は、借地権の譲渡となります。
 トラブルを未然に防ぐ意味で地主や家主の了解を得ましょう。

夫婦の財産に関する民法は以下の通りになります。


第3節 夫婦財産制
第1款 総則

夫婦の財産関係
第756条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

婦財産契約の対抗要件
第757条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第758条 削除

夫婦の財産関係の変更の制限等
第759条 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。

2.夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。

3.共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。

財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件
第760条 前条の規定又は第755条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第2款 法定財産制

婚姻費用の分担
第761条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

日常の家事に関する債務の連帯責任
第762条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

夫婦間における財産の帰属
第763条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

2.夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。





財産分与の際にかかる税金について
財産分与や慰謝料も課税される場合がありますので、よく注意しましょう。
〇給付する側に課せられる税金
財産分与や慰謝料については、現金以外の不動産や株式などに対してかかります。
例えば
①5,000万円の土地を夫が妻に財産分与や慰謝料として渡した場合
②時価8,000万円に値上がりした場合、③この差額の3,000万円は「譲渡益」となり、夫が譲渡益課税を負担することになります。

居住用不動産については、特別乗除制度もあるので、税理士に相談することをお勧めします。
給付を受ける側に課せられる税金
不動産を譲り受けた側には不動産取得税がかせられます。財産分与や慰謝料によって高額の現金を得たような場合は、税金を支払わなければならいこともあります。


親権者とは?
〇慰謝料とは?
相手方から受けた精神的苦痛に対して支払われるお金です。一般的には、浮気や不倫などの不貞、それに暴行や虐待など。
いつまでに請求するのか?
離婚後3年以内に請求しなければなりません。
(民法724条)
また、慰謝料の金額は結婚期間結婚期間の長短で変わってきます。長い間一緒に結婚していた相手に突然離婚するとなれば精神的なダメージが大きいと考えられますから、金額もそれなりに高くなってくる可能性はありえます。ただし、必ずしも熟年離婚で慰謝料が高くなるとはかぎりません。
なお、慰謝料は離婚の直接的な原因を作った側が、精神的損害を受けた相手に対して支払う損害賠償ですが、損害を被った相手にも責めを負うべき点があるならば、過失相殺されるのが一般的です。つまり、双方の過失を比較して、損害と相殺したうえで、慰謝料が決定されます。

〇慰謝料はどうやって決定するか
精神的な損害と過失を夫婦それぞれについて認定して決めます。

〇慰謝料は可能な限り分割払いではなく一括支払いにしましょう
離婚して別々に生活を始めてしまえば、法律的に義務付けられていてもおざなりになりがちです。引っ越しでお互いの距離が物理的に離れてしまったり、再婚したりすればなおさら、支払がとどこおることにもなりかねません。
分割にせず、できるだけ一括ですませるほうが無難です。やむを得なく分割にする場合でも、最初に支払う頭金を多くするなどの工夫は必要です。
※決定事項はかならず書面で残すようにしましょう。

調停の結果
分割支払いに決まったときは、支払の時期、金額、支払い方法についてなど
取り決めたことを必ず公正証書として書面を残しましょう。

公正証書とは
法務大臣が任命する公証人(裁判官、検察官、法務局長、弁護士などを長年つとめた人から選ばれる)が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。公文書ですから高い証明力があり、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たず直ちに強制執行手続きに移ることができます。すなわち、金銭の貸借や養育費の支払など金銭の支払を内容とする契約の場合、債務者が支払をしないときには、裁判を起して裁判所の判決等を得なければ強制執行をすることができませんが、公正証書を作成しておけば、すぐ執行手続きに入ることができます。

〇内縁の場合でも財産分与や慰謝料の請求が可能です
原則として、婚姻としての法律の保護を受けることはできませんが、内縁関係を解消するときには財産分与や慰謝料を請求することが可能です。

内縁とは
夫婦同然として生活して結婚の意思もあるけれど、婚姻届けは出していない場合。例えば、すでに誰かと婚姻届を出している状態だが、他の誰かと結婚するつもりで同棲している場合。(重婚的内縁関係)

〇不貞などについては内縁でも慰謝料を請求されます
婚姻関係と全く同じというわけではありませんが、準婚関係といって内縁関係でも結婚に準じたあつかいがなされ、婚姻に関する民法の規定が類推適用されます。しかし、結婚する意思や夫婦同然の生活といった、はっきりとした線引きが難しいところで、場合によっては、同棲や単なる共同生活とも解釈されることがあります。通常の夫婦の離婚のようにいかないのが現実です。

〇調停では、財産分与や慰謝料の額を決めてくれます
調停離婚の場合、両者が調停でうまく合意し、調停が成立すれば、裁判所側が調停調書を作成します。基本的には、裁判所(調停委員)側が財産分与や慰謝料について一方的に決めてしまうということはありませんが、当事者双方が同意すれば、調停で慰謝料や財産分与を決めてもらうこともできます。
合意に至らず、調停が不成立となった場合は、家庭裁判所の職権によって審判に付されることもあります。この審判において、財産分与、慰謝料についての判決もなされます。その後2週間以内に当事者が異議申立てをしないと、審判の内容が確定してしまいます。異議申立てがあった場合は、その審判は効力を失い、さらに解決を求めて訴訟を提起することになります。

慰謝料と財産分与の金額(実例)

婚姻年数 離婚原因 慰謝料額 財産分与額
46年 夫の不貞行為、
悪意の遺棄、
離婚届の無断提出
200万円 0円
34年 夫の悪意の
遺棄、生活費を入れない
300万円
500万円
21年 夫の暴力、
7年間扶養義務を履行しない
100万円 300万円
17年
妻が植物人間に
なったこと
0円 一時金として300万円、
毎月5万円の終身定期金
10年
妻の信仰を嫌っていた夫の精神的虐待及び暴力 300万円 640万円
3か月 夫の性交渉拒否 500万円 協議離婚成立

 

5)子どもをめぐる問題と法律

■親権者とは?

「親権」とはどんな権利なのか?
親権には2つあります。

1)身上監護権
子どもの世話をしたり、
しつけや教育をする。

2)財産管理権
子どもの財産を管理したり、子供に代わって法的な行為(契約など)を行う。

この2つの親権を持つ人を「親権者」といいます。
未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合は、「親権者」をどちらにするか決めなければなりません。どちらが親権者になるか決められない場合は、家庭裁判所に親権者の調停申立てをし、調停あるいは裁判で親権者を決定します。
親権はあくまで、子どもを保護することが目的の制度です。
親権者をどちらにするべきかを決定する審判では、家庭裁判所の調査官が、子どもをめぐる家庭環境や当事者である父母についての調査を行い、どちらが親権者としてふさわしいかを検討します。子どもの利益や子どもの福祉を十分に考慮したうえで、親権者が決められます。

■離婚後に親権者を変えることもできる
例えば「子どもの親権は父親が持ち引き取ったにもかかわらず、ある時期からろくに面倒も見なくなり、子どもも最近では母親方にずっといる。」というような場合は親権者を変えることも可能です。

親権者を変更するには?
家庭裁判所で変更の調停あるいは裁判の申立ての手続きをします。
親権者変更の申立ては、父母以外の子どもの親族(たとえば祖父母など)からでも行うことができます。親権者の変更に際しては、子ども本人の意思も十分考慮されます。とくに子供がある程度の年齢に達している場合には、子どもの意思や希望を尊重するという例が多いようです。

■親権者にならなくても、子どもをひきとって育てることができる
親権は、子どもの世話やしつけをする監護権と子どもの財産管理などをする財産管理権の2つにわかれています。場合によっては、この2つの権限を別々にわけて考えて、親権者のほかに「監護者」というものを定めることができます。
経済的な理由から、親権者となった父親が子どもの財産管理などの後見人的な役割を負い、母親が監護者となって子育てをしたという実例もある通り、親権者にならなくとも、子供を育てることは可能です。

■複数の子供がいる場合、親権者を分けることもできる
夫婦に子どもが2人いる場合、たとえば上の子はお父さんが、下の子はお母さんがひきとる、という例もよく聞かれます。 離婚に際して、子どもがある程度の年齢に達し、子どもの意思や希望が尊重されているのであれば、 それぞれの子どもの親権を別々にすることも可能です。たとえ複数の子どもがいるとしても、「どちらの親が子どもの養育者としてふさわしいか」という基準によって親権者が決定されます。可能なかぎり、親権者はどちらか一方に決定されることが望ましいと思われます。

親権者変更の手続きの流れは、以下の通りです。

親権に関する民法は以下の通りです。


第3章 親権
第1節 総則

親権者
第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2.子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3.親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

離婚又は認知の場合の親権者
第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3.子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4.父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5.第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6.子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

第2節 親権の効力

監護及び教育の権利義務
第820条 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

居所の指定
第821条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

懲戒
第764条 第822条 親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内で自らその子を懲戒することはできる。

職業の許可
第823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。

2.親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

財産の管理及び代表
第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

父母の一方が共同の名義でした行為の効力
第825条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

利益相反行為
第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2.親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

財産の管理における注意義務
第827条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。

財産の管理の計算
第828条 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。

第829条 前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。

第三者が無償で子に与えた財産の管理
第830条 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。

2.前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。

3.第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。

4.第27条から第29条までの規定は、前2項の場合について準用する。

委任の規定の準用
第831条 第654条及び第655条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。

財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効
第832条 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。

2.子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。

子に代わる親権の行使
第833条 親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。








〇親権者になるための基準はあるのか?
親権者の決定基準となるポイント
※ここで紹介する決定基準は、あくまで裁判離婚の場合ですが、
 協議離婚の場合でも応用できると思います。

健康状態が良好であること
当然のことながら、子どもを育てていくためには、心身ともに良好な健康状態であることが不可欠です。

子どもと接する時間がとれること
父親方、母親方にかかわらず、子供と接する時間がより多くとれる方が親権者として適当とみなされる可能性は高いでしょう。

子どもの年齢および子ども自身の事情も考慮する
裁判所の調停や審判では、10歳くらいまでは、子どもは母親とのスキンシップが重要であるという見方をよりどころとして、判断することが少なくないようです。15歳以上となれば自分での意思決定が出来ると判断され、子ども自身の意思や希望が尊重されるようになります。

経済的な事情は大きな問題ではない
子どもの幸せはお金でははかることができません。ですから、経済的に豊かであることは必ずしも親権決定の大きな基準とはなりません。

離婚に際しての責任について
どちらかの不貞行為で離婚した場合、親権者でも監護者にもなれないという法律はありません。あくまでも、子どもの幸せが優先基準になります。

「監護補助者」となる親戚やあてがあるか
父母とも仕事をもっている場合、子どもの養育のための「監護補助者」が必要となります。

「監護補助者」となるには、その人自身の心身状況や人格、および育児経験などが重要なポイントとなります。かならずしも、親族でなくてはならないわけではないので、乳幼児保育施設を監護補助者として立てることも可能です。


どちらも親権者になりたくない場合は?

子どもをひきとれない事情がある場合には?
たとえば、父親は子どもを養育できる精神状態ではなく、母親はすでに再婚が決まって子どもをひきとることが難しいというような場合。このような場合でも、調停や裁判(訴訟)で親権者がどちらになるか決定します。

やむを得ない事情があれば親権を辞退できます
たとえば、刑務所に服役しなければならい、重病におかされている、長期にわたって海外で生活しなければならいというような場合。
裁判所の審判によって認められれば「親権を辞退する」ことができます。やむを得ない事情で一方の親が親権を辞退した場合、当然ながらもう一方の親が親権者となるのが一般です。しかし、仮にもう一方の親が親権者としてふさわしくないと裁判所が判断した場合には、養育施設に入れられることになります。親に代わって国が子どもの監護者となります。
どうしても、子どもの面倒をみることが難しいようなら、親権者は親にしておいて、親族を監護補助者にするという方法もあり、社会福祉事務所や児童相談所などで、相談するとよいでしょう。

問題のある親権者は、親権を喪失することもある
たとえば、いやいやながら子どもをひきとった親が、子どもに暴力を加えたり、 虐待をするという場合や、子どもを学校に行かせない、子どもの養育を放棄している場合です。
このような場合子どもの親族、あるいは検察官の申立てや、さらに、児童福祉法によって、児童相談所の所長も、不適格と判断した親権者に関して、親権の喪失を申立てることができます。

〇親権喪失の申立てがあった場合
決定するまでの間、親権が停止され、祖父母などが親に代わって親権代行者となることもできます。

〇こどもの親権者がいなくなった場合
親族や児童相談所長らによって、裁判所に子どもの後見人の選任を申し立てることになります。


親権喪失について
親権を喪失される申立権を持っているのは
〇子どもの親族(祖父母、叔父、叔母など)
〇検察官
〇児童相談所の所長

親権喪失についての民法については、以下の通りです。


第3節 親権の喪失

親権の喪失の審判
第834条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について親権の喪失の審判をすることができる。
ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

親権停止の審判
第834条の2 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。

2.家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

管理権の喪失の審判
第835条 父又は母がによる管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権の喪失の審判をすることができる。

親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し
第836条 第834条本文、第834条の2第1項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

親権又は管理権の辞任及び回復
第837条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。

2.前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。






■離婚後に子どもと会うにはどうしたらよいか?

面接交渉とは
親権者にならなかった側が、離婚後に子どもと会って一緒に時間をすごしたりすることをいいます。また、電話や手紙で連絡を取ることができる権利のことをいいます(民法766条1項)。


面接交渉は、書面にして決めておきましょう
たとえば、
〇1か月のうち何回会うか
〇何時間合うのか
〇日時を決めるのは、誰なのか
〇場所はどこにするのか
〇連絡方法はどうするのか
など、細かく具体的なことを後のトラブルを防ぐためにも、きちんと決めて書面で残しましょう。

面接交渉が認められないことがある
面接交渉は、あくまで「子どもの福祉や利益に反しない」ということが基本です。
どう考えても問題がある場合は、交渉権が認められないことがあります。
〇子どもに暴力や虐待を加えるなどの理由によって、
 既に親権者としてふさわしくないと判断されている場合。
〇離婚時に教育の支払いを合意したにもかかわらず、
 支払えないわけでもないのに、教育費を支払うのを怠っている場合。
〇面接交渉によって、力づくに子どもをさらってしまう可能性が
 考えられる場合。
〇子どもが自分の意思で面接交渉を拒否した場合。

面接交渉が認められるかどうかは、以下の通りになります。



■子どもの戸籍について知っておこう
そもそも戸籍とは?
戸籍とは、その人の身分関係を登録して、それを証明するものです。身分関係と書くと何だろうと?と思いますが、誰が誰の子で、誰が誰と結婚していて、というようなことです。戸籍を調べていくと、その人の送ってきた過去が順番に分かるようになっています。


子どもを自分の籍に入れることができる
離婚をすると、子どもは自動的に夫の戸籍に残されます。もしも、親権者が妻の場合は、親権者になったら自動的に子どもも自分の戸籍に入れられるように勘違いをしてしまいますが、実際は、氏の変更許可の手続きをとらなければ夫の戸籍のままなので、十分に注意しましょう。

例えば父母が離婚し、父の戸籍にあって父の氏を称している子が、母の戸籍に移り母の氏を称したいときに、この申立てをして、家庭裁判所の許可を得る必要があります。なお、母親と同じ氏にあらためた子が未成年であった場合、成人してから1年以内(つまり20歳である間)に市役所に届出をすれば、もとの氏に戻ることが可能です。


子どもは15歳以上であれば、子ども自身で申立てが出来る
子どもが15歳以上であれば、子ども自身が「子の氏の変更許可の審判」の申立てをすることができます。
例えば、子ども自身が母親と同じ戸籍に入りたい場合には、たとえ母親が親権者でなくても同じ戸籍に入ることができます。

子の氏に関する民法は、以下の通りになります。



子の氏
第790条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。

2.嫡出でない子は、母の氏を称する。

子の氏の変更
第791条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。

2.父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

3.子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前2項の行為をすることができる。

4.前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。






子どもの養育費について知っておこう
そもそも養育費とは?
子供が成人して大人として、親から自立できるという年齢までに養育してもらうために必要な費用です。しかし、離婚の際の子の養育費の支払いについて、直接定められた法律はありませんし、養育費を決める特別の基準があるわけでもありません。
民法上は親の扶養義務の他、「監護について必要な事項が、協議でまとまらないときは家庭裁判所が定める」という規定があるくらいです。
実際には家庭裁判所で協議により支払う側の経済的なレベルを標準にして決められることが多く、相場として一般的な家庭では子供一人当たり5万円前後といったところです。
離婚の際に、養育費の支払いについて同意していても、頻繁に養育費の不払いに関してのトラブルが起きています。不払いになったからと言って泣き寝入りをせず、公正証書を作成したり、内容証明郵便を出してみるということも大事です。


養育費を確保する方法
家事審判法と家事審判規則には、審判や調停で決定した内容について特別の規定が定められています。
不払いが続いて内容証明郵便などで催促しても効果がない場合に、法的な処置を受けることもできます。

1)履行勧告
家庭裁判所は、権利者の申し出のあった場合、審判や調停で定められた義務がきちんとはたされているかどうかを調査し、はたされていない場合には義務の履行を勧告します。これは、裁判所が行う勧告で、かなりの効力があります。

2)履行命令
家庭裁判所は、審判や調停などで定められた金銭支払いなどの義務を怠っている者に対して、履行命令を下すこともできます。正当な理由もなく履行命令にしたがわない場合には過料の支払が命じられます。

3)家庭裁判所への寄託
義務者が申し出れば、権利者にかわって裁判所は金銭の受託を受けることができます。(寄託とは、物を預かって保管し、後で返還する契約をいいます。)
家庭裁判所へ寄託させるのは、第三者である裁判所を仲介させることによって当事者同士の接触をさけるという配慮になります。

4)家庭裁判所への寄託命令・調停
場合によっては、寄託するための調停や寄託を命じる審判もありえます。

5)強制執行
審判や調停調書は判決と同様の効力がありますので、養育費請求権について、支払義務者に強制執行ができます。なお、養育費は、子どもから父親に対する扶養料の支払という形で請求することも可能です。その場合、親権者が子どもに代理して請求することになります。


■事情によって、養育費の額を増減できる場合がある?
一度決められた養育費を変更することは、そう簡単ではありません。
それでも、やむを得ない事情がある場合は、養育費の増減を請求することが可能です。
例えば、増額の場合は
〇入学金など進学にともなう学費
〇ケガや病気で入院した場合
〇受け取る側が失職などで収入が低下した場合 など

減額の場合は
〇受け取る側の収入が大幅にアップした場合
〇支払う側が失職で収入が低下した場合 など


離婚後に子どもが生まれた場合はどうするのか?
《離婚後300日以内に子どもが生まれた場合》
離婚成立後300日以内に生まれた子は、法律上は離婚した夫の子どもと推定されます。(嫡出子)
たとえ夫以外の子どもを妊娠した後に離婚をしても、前夫の戸籍に入籍されます。また、離婚後300日を過ぎて生まれた場合は、再婚していない場合は、非嫡出子として母親の戸籍に入ります。


■離婚後にうまれた子どもが夫以外の男性の子である場合
離婚成立後300日以内に生まれた子は、実の父である男性がいたとしても認知することができません。実の父が認知したい場合は、前夫と生まれた子供が親子ではないことを訴訟で確定する必要があります。
この手続きは、前夫が家庭裁判所に対して「嫡出否認の訴」を提起するのが原則となっております。実の父側から調停を申し立てることができません。
ただし、父子関係のことについて争いがなければ認知審判の申立てをすることができます。

 



6実際の離婚の手続きについて

以前にも述べましたが、離婚といっても、当事者間のコンセンサスの程度によって色々な方法があります。雇止めの有効性判断は、

Ⅰ)協議離婚
当事者同士で話し合いをして、離婚理由がたとえどのような理由であったとしても、市区町村役場へ離婚届を提出し、受理されることによって、離婚することができます。離婚の約90%を占める離婚の方法です。

Ⅱ)調停離婚
二人の間で話し合いを行っても合意に達しない、あるいは全く離婚するつもりがない、暴力が怖くて話し合いが不可能など、協議離婚が出来ない状態の場合に家庭裁判所へ調停を申し立てる離婚の方法です。

Ⅲ)審判離婚
調停によっても話がまとまらず、調停委員が審判にまわしたほうが良いと判断した場合、あるいは離婚には応じるが、金銭問題で解決がつかないといった場合には、家庭裁判所が審判をする場合もあります。

Ⅳ)裁判離婚
調停で話合いがつかない、裁判所の審判にも納得がいかない、ということになれば、最終的には離婚訴訟を起こして離婚の請求をすることになります。


Ⅰ)協議離婚
協議離婚の際は、夫婦双方で離婚の意思をきちんと確認したうえで離婚届を作成し役所(役場)へ提出します。届出には、それぞれの戸籍謄本が必用で、さらに成人である証人が2人必要です。
離婚届の用紙は役所で無料で手に入ります。また、窓口に提出された届けは、必要事項が記載されているかどうかの形式的なチェックだけで、受理されます。

合意書の作成
たとえ協議離婚で、お互いに納得しあって問題なく離婚する場合でも、取り決めたことをきちんと書面で残しておくのが賢明です。
後々のトラブルの原因をつくらないよう、特に財産分与や養育費といった金銭に絡んだ問題は、はっきり書面に残しておくことが賢明です。そのためにも合意書を作成し、財産分与、慰謝料、養育費、親権、面接交渉権など細かいところまで、具体的に記載しておくと良いでしょう。
なお、財産分与、慰謝料、養育費など金銭の支払いに関する記述は、合意書などより執行力の強い 注1)公正証書を作成しておく方が良いでしょう。

注1)協議離婚でつくられる公正証書は一般的に
  「離婚給付契約公正証書」と呼ばれます。
  その作成にあったっては以下のことに注意が必要です。

1)代理人を認めない公証人が多い
 (先に公証役場での確認が必要)
2)公正証書のその場での交付送達を公証人に依頼する。
3)実現可能な養育費、慰謝料、財産分与の金額とする
 (多ければ良いというものではない)
4)契約書の原案作成に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談する。
5)財産分与により、例えば夫より妻に不動産を譲渡した場合、
 夫に譲渡所得税が掛かる。一方、妻には贈与税は掛からない。
6)年金分割の請求は公正証書等を持参して年金事務所での手続が必要。

《公正証書の作成手数料》

目的の価格 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで
17,000円
3,000万円まで
23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円


協議離婚の手続きは、以下の通りになります。

Ⅱ)調停離婚
夫婦間の協議が不成立の場合、家庭裁判所に調停の申立てがなされ、調停離婚の手続きに入ります。
この調停の申し立ては夫婦一方の同意がなくともでき、申し立てる本人が、相手方の住所地の管轄にある家庭裁判所に出すことになっています。ただし、健康上のやむを得ない理由がある場合や、夫婦が合意してきめるばあいは、その限りではありません。
離婚調停手続きは、家庭裁判所において、調停委員二名が、双方から事情を聞き裁判官の指揮のもと両者の間に入って調停案を示すなどして、当事者間で公正で具体的に妥当な合意を成立させ、紛争の自主的任意的解決をはかろうとするものです。
調停は非公開で夫と妻を交代で調停室に呼んで、事情を聞きながら夫婦がお互いに合意できる点を探っていきます。申立人と相手が直接話し合うわけではありません。
調停によって離婚の合意が成立し、双方が納得することができ、調停委員会が離婚するのが妥当と認めた場合には、調停は成立します。
調停が成立すると、離婚の意思の確認の他、離婚に関する具体的な合意内容を『調停調書』として作成します。この調書が作成された時点で、調停離婚は成立します。
離婚の成立日は調停が成立した日です。

調停離婚の手続きは、以下の通りです。


■離婚調停にかかる費用は?
〇調停申立書に貼付する収入印紙1,200円
〇事務連絡としての実費負担として裁判所に予納する切手800円程度
合計2,000円程度です。
なお、特殊な鑑定や出張などが必要な場合を除いては特別な費用を要することはないでしょう。


離婚調停が行われる期間は?
まず、調停が1回で終わるということはほとんどありません。合意が出来るまで、1か月程度の期間をおいて何度か調停を行います。事案により異なりますが、たいていの場合は6か月以内で調停が終了するようですが、中には1年以上かかる場合もあるようです。
離婚調停調書の内容は判決と同じ効力があります。
調停では、調停委員が間に入りますが、うまく意見を主張できないと不利な条件で調停が成立してしまうことがあります。
いったん調停が成立してしまうと、調停の内容に関して、不服を申し立てることはできません。そのため、合意ができない点や少しでも疑問点があれば、必ず調停が成立する前に徹底的に話を詰めましょう。


■離婚調停が成立したら?
調停成立の日から10日以内に役所の戸籍係へ離婚届を提出しましょう。
10日を過ぎてしまうと、3万円以下の過料がかかる場合があります。



Ⅲ)審判離婚
調停委員の努力により繰り返し調停が行われたにもかかわらず、離婚が成立しそうもない場合、家庭裁判所が調停員の意見を聞いた上で、独自の判断で離婚を言い渡す場合があります。
これが審議離婚です。
審議離婚になるのは、以下のような場合です。

1)実質的には離婚の合意が成立しているのに、
 調停の相手方が病気などの理由から調停日に出頭できない場合

2)離婚そのものには合意するが、財産分与の額などで話し合いがつかず、
 調停不成立になった場合

3)調停ではいったん離婚の合意が成立したのに、
 当事者の一方が急に行方をくらますなどして、
 調停期日に出頭しなくなった場合など

■審判確定後の手続き
審判離婚の場合には、審判の確定と同時に離婚が成立しますが、審判の確定後に離婚の届出が必要で、確定の日から10日以内に申立人は本籍地あるいは住所地の市区町村役場に離婚届を出す必要があります。

審判離婚の手続き、以下の通りです。


審判離婚の決定に不服な場合は?
審判での決定に対して不服がある場合には、不服を申し立てることができます。
これを即時抗告といいます。
即時抗告が出来るのは、財産分与、親権者および監護者の指定など、扶養などに関する審判に対してです。
なお、審判の告知後の2週間以内に行わなければなりません。


■審判離婚にかかる費用は?
〇審判申立書に貼付する収入印紙1,200円
〇事務連絡としての実費負担として裁判所に予納する切手が800円程度
合計で2,000円程度です。
なお、特殊な鑑定などが必要な場合を除いては特別な費用を要することはないでしょう。



Ⅳ)裁判離婚
協議離婚の話し合いもまとまらず、家庭裁判所の調停、審判でも離婚成立にいたらなかった場合に、どうしても離婚しようと思えば、注1)裁判所に離婚の訴えを起こし、その裁判に勝って、離婚を認める判決を得なければなりません。
これが裁判離婚です。

注1)以前は離婚裁判は地方裁判所で行われていましたが、
  調停が家庭裁判所で行われた後スムーズに離婚裁判に移行できるように、
  人事訴訟法の制定によって家庭裁判所で行われるようになりました。

そしてこの離婚訴訟を起こすには民法で定められた以下の5つの法定離婚事由がなければなりません。
(民法第770条)

1)配偶者に不貞な行為があった時
2)配偶者から悪意で遺棄された時
3)偶者の生死が三年以上明らかでない時
4)配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない時
5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由のある時


■離婚訴訟の具体的な手続き

訴状の提出
離婚訴訟をするには、訴状を作成し決められた管轄の家庭裁判所に提出することから始まります。離婚裁判では、離婚の訴えを起こしたほうが原告となり、その配偶者を被告として、「原告と被告を離婚させる判決を求める」という請求がこの訴状です。
訴状には、当事者(原告、被告)の本籍地と住所、請求の趣旨(内容)、請求の原因とを記載し、収入印紙を貼って裁判所に2通提出します。

口頭弁論
裁判所は提出された訴状のうち1通を被告に送達し、裁判が開かれる日を指定して、原告、被告を呼び出します。この裁判が開かれる日を「口頭弁論期日」と言います。被告は、原告が提出した訴状に反論する「答弁書」を作成して、原告の主張に対する反論を準備することになります。
口頭弁論では、原告は訴状を、被告は答弁書を陳述した後、両者の証拠書類の提出や本人(あるいは証人)尋問が行われます。
この口頭弁論が何度か行われた後、裁判官による審議を経て判決が下されるという流れが一般的です。

陳述書の作成
原告本人が対象となる尋問が原告本人尋問、被告本人が対象となる尋問が被告本人尋問です。離婚裁判では裁判官も本人尋問を重視しますが、短い本人尋問の中で夫婦の歴史全体をわかってもらうことは不可能です。
そこで、本人尋問の前に、夫婦の歴史の概略とその中で破綻の原因となった事実を「陳述書」というタイトルの書類にまとめ、あらかじめ裁判官に読んでもらうことが多いのです。

控訴、上告
離婚裁判も、出た判決内容に不服があるときは憲法に基づいて第三審まで上訴できます。この場合、第一審は家庭裁判所、第二審は高等裁判所、第三審は最高裁判所になります。
家庭裁判所から高等裁判に上訴することを控訴と言いますが、この場合、一審で下された判決に事実認定の誤りがあることや、下された判決が法律に違反していることなどの理由が必用となります。
第二審の高等裁判所の判決に不服で更に上の最高裁判所に上訴することを上告と言いますが、この場合は、原判決の判断が憲法に違反しているなどの理由が必用で、事実関係についての理由は認められていません。

7) 離婚後の年金について

まずは、年金の基礎を確認しましょう。
年金制度は、3段階の構造になっています。まず、下記の図の1階部分の基礎年金(国民年金)があり、原則として20歳以上になったら強制加入し、保険料を納付します。これに上乗せする形で2階部分の厚生年金や共済金があり、さらにその上の3階部分の厚生年金基金などがあります。

3階建ての年金の構造は、以下の通りです。

※オレンジ色の部分が、年金分割制度の対象です。


■離婚時の年金分割とはどのような制度か

年金分割制度とは?
平成19年4月から厚生年金の分割制度が始まりました。
離婚後に片方の配偶者の年金保険料の婚姻期間中の納付実績の一部を分割し、それをもう片方の配偶者が受け取れるという制度です。
簡単に説明すると結婚していた期間に、夫が納めていた2階部分の厚生年金保険に該当する部分の年金の半分が、将来、妻名義の年金として受け取ることができるようになるということです。また、1階部分の基礎年金(国民年金)や3階部分の厚生年金基金、そして、婚姻期間前の部分は反映されません。勘違いをしている方がとても多いようですが、将来受け取る予定の年金の半分がもらえる訳ではありませんので、注意しましょう。

注意しなくてはいけないことは?
メリットがあるのは、婚姻期間中に2階部分の厚生年金や共済金を相手が自分よりも多く納めていた場合です。もしも、自分の方が年金の受給額が多い場合は、逆に年金分割を請求される立場であるということです。
また、年金をもらうために必要な期間があります。以前は年金受給を受けるにあたり、原則として保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間が合計で「25年以上」必要でしたが、制度が改正され、平成29年8月から受給資格期間が「10年以上」に短縮されました。


■比較年金分割の種類は2つあります
合意分割と3号分割の2種類があります。

  合意分割 3号分割
離婚日 平成19年4月1日以後
平成20年4月1日以後
夫婦間の合意 当事者間で合意し、
分割することができます。
しかし、合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めます。
当事者双方の合意は
必要ありません。ただし、
分割される方が障害厚生年金の
受給権者で、この分割請求の
対象となる期間を年金額の基礎としている場合、請求は認められません。
分割
割合
2分の1が上限
2分の1
請求
期限
原則、離婚等した日の翌日から起算して2年以内
原則、離婚等した日の翌日から起算して2年以内
分割対象期間 婚姻期間中 婚姻期間中に平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間中の厚生年金記録があること。

夫婦間の合意の手続が必要なものを「合意分割」、必要がないものを「3号分割」がありますちなみに,「1号分割」「2号分割」というものは存在しません。

〇3号分割のみ
 合意する必要無く1人で手続き

〇合意分割のみ
 夫婦で分割する割合(按分割合)を合意して手続き

〇3号分割+合意分割
 夫婦で分割する割合(按分割合)を合意して手続き

ということになりますので,3号分割のみ」に当てはまるかどうか、がポイントになります。

3号分割のみの場合とは、以下の通りです。



■離婚分割の手続き
3号分割の場合は、分割してもらいたい側が、離婚後に必要書類を揃えて年金事務所など(厚生年金の手続きを取り扱う役所・機関)へ行って「年金分割の標準報酬改定請求」という手続きをするだけです。
しかし合意分割にはいろいろな手続きが必要となります。

情報提供の請求
合意分割をするためには,まず「年金分割のための情報提供請求書」に必要書類を添えて年金事務所に情報提供請求をし、「年金分割のための情報通知書」という書類を手に入れなければなりません。

これにより、
〇分割の対象となる期間
〇分割対象期間にかかる離婚当事者それぞれの保険料納付記録
〇按分割合の範囲
〇分割の影響額がわかるものなど
等の分割の割合や額を決める上での必要な情報が提供されます。

この情報提供請求に必要な書類は、
〇年金手帳,国民年金手帳または基礎年金番号通知書
〇戸籍謄本です。

書類の作成
得られた情報をもとに、離婚当事者間で話し合い合意できると、公正証書もしくは公証人の認証を受けた私署証書をつくらなければなりません。
当事者間で按分割合にかかる合意が成立しなかった場合は、家庭裁判所に申し立てし、按分割合を決めてもらうことになります。その時の判決の謄本または抄本が按分割合を証明する証書になります。
具体的には(確定審判、調停調書、確定判決、和解調書)の謄本または抄本です。

年金分割の請求
実際の年金分割の請求は「標準報酬改定請求書」というものに必要な書類を添付して行います。提出先は最寄りの社会保険事務所です。
その際に必要な書類は
〇按分割合が記載された書類
 (当事者同士の合意に基づいて作成された公正証書、
 もしくは家庭裁判所の決定による按分割合の記載された
 確定判決等の謄本など)
〇年金手帳,国民年金手帳または基礎年金番号通知書
〇戸籍謄本です。
なお、この年金分割の請求は、原則として離婚をした日の翌日から起算して2年という期限があるので、それを経過した場合は無効となります。

実際の支給
年金分割(改定請求)を受理した社会保険事務所は、提出書類に記載された按分割合に基づいて当事者それぞれの保険料納付記録の改定等を行い、改定後の保険料納付記録について、年金分割の請求者とその相手方に対して、通知を送付します。
以上の流れにより、婚姻期間中に配偶者が支払った「厚生年金保険料の各月ごとの記録」が分割され、夫および妻のそれぞれの受給開始年齢から年金の支給が始まります。

年金分割までの流れは、以下の通りになります。

8) 離婚に関するQ&A


Q.調停が不成立に終わった場合は?
A.調停不成立に終わった場合、調停不成立の措置に対して
 不服の申立ては出来ないため、離婚訴訟を提起することになります。



Q.調停中にどちらかが死んでしまった場合は?
A.当事者の一方がなんらかの理由で死亡した場合、通常の調停では、
 受け継ぐ資格のある人が調停を引き継ぐことができます。
 しかし、離婚調停の場合、当事者の死亡で調停の目的もなくなるので、
 終了ということになります。
 ただし、離婚に関しては合意していて、財産分与や慰謝料請求だけが
 目的の場合は、財産権として相続性があるとみなされ、
 申立人の相続人が調停を引き継ぐことになります。
 調停を引き継ぐ者は、「受継の申立書」と死亡者と自分の戸籍謄本を
 用意し、家庭裁判所へ申し立てます。



Q.審判離婚(調停で離婚に合意していなくても、家庭裁判所が調停委員の
 意見を聞いた上で独自の判断で離婚を言い渡すこと)になるケースは
 どんな場合ですか?
A.ごくまれですが、以下のような場合です。
1)実質的には離婚の合意が成立しているのに、調停の相手方が
 病気などの理由から調停期日に出頭ができない場合。
2)離婚そのものには合意するが、財産分与の額などで話し合いがつかず、
 調停不成立になった場合。
3)調停ではいったん離婚の合意が成立したのに、当事者の一方が急に行方を
 くらますなどして、調停期日に出頭しなくなった場合など。



Q.裁判後の戸籍はどうなりますか?
A.裁判離婚すると、戸籍の夫の欄には
 「平成〇年〇月〇日妻〇〇と離婚の裁判確定」、
 妻の欄にも「平成〇年〇月〇日夫××と離婚の裁判確定」と記載されます。
 そして、協議離婚や調停離婚と同様に、
 ①婚姻前の戸籍に戻るか、
 ②婚姻前の氏にもどったうえで新戸籍をつくるか、
 ③離婚の際の氏を称する届出をしたうえで新戸籍をつくるかを選びます。
 離婚の際の氏を続けて称するという届出は、
 判決確定の日から3か月以内に出す必要があります。





Q.離婚事由を証明するにはどうしたらよいですか?
A.事実を証明しなければ訴訟には勝てません。
 離婚訴訟においては、相手に離婚にいたった責任があるということを
 確たる証拠をもって主張しなければなりません。
 例えば、「悪意の遺棄」であれば、家庭を捨てて出ていき戻ってこないと
 いう事実で十分証明となり、相手の借りているアパートまでは調べる必要は
 ありません。また、相手のDVであれば医師の診断があれば、
 傷の程度にかかわらず、その事実を証明できたことになります。
 もっとも争われる不貞の場合はラブホテルに入ったことが確認できれば、
 強い証拠になります。
 ただ実際には探偵事務所に依頼して尾行調査をすることになり、
 そのための費用はかなり掛かります。



Q.痴呆症になってしまった配偶者との離婚はできますか?
A.精神病を離婚原因と知って認めるかどうかは、大変むずかしいところです。
 民法では「回復の見込みのない強度な精神病」と記載されていますが、
 ここで言う「強度」とは「夫婦として結婚生活の本質的な義務を
 果たせないほどの精神病」であるということで、分裂病、早期性痴呆、
 躁鬱病、偏執病、初老期精神病などの高度な精神病にかかった場合を
 さしています。
 また、「回復の見込みがない」かどうかは精神科医の鑑定をもとに、
 裁判所が判断することになっています。
 老人性痴呆症のような病気を原因とする離婚請求が
 「回復の見込みのない」ものにあたるのかどうかは、問題のあるところです。
 精神病離婚の場合、「強度」の精神病であるという厳しい条件があるため、
 実際には「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚請求されることが
 多いようです。
 ですので、痴呆症の場合もそのことにより引き起こされる
 様々な事情により、夫婦生活が破綻していると認められれば、
 離婚は成立します。



Q.不貞を一度は許してしまっても、後から離婚請求は出来るのか?
A.戦前では、夫婦の一方が不貞行為をしても、相手がこれをいったん許した
 場合には、離婚の訴えは出来ないという規定がありましたが、
 現在の民法では、そのような規定はありません。
 たとえいったんは許したとしても、あらためて離婚請求の訴訟を起こせば、
 離婚が認められる可能性もあります。
 不貞をいったん許しても離婚請求ができなくなるわけではありません。



Q.不貞行為をした側からの離婚請求は認められるのか?
A.自分から不貞をはたらいておきながら、さらに離婚を求めようというのは
 道徳的にも許されるべきものではありません。
 ですが、別居期間が長く続き、事実上、夫婦生活が破たんしている場合では、 有責配偶者からの離婚請求を認めることが多くなってきています。
 最高裁判所でも、別居期間が30年以上の夫婦については、
 未成熟の子がいないこと、相手方配偶者の生活がある程度安定していること
 などの条件のもとに、
 「有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることは
 できない」との判決を出した例があります。

《有責配偶者からの離婚請求が認められる3条件(最高裁判決)》
1)相当長期間の別居
 (別居が当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に
 及んでいること)
2)未成熟の子が存在しないこと
3)相手方配偶者が離婚によって、精神的、社会的、経済的に極めて
 苛酷な状態におかれる事情がないこと
 (十分に財産分与したり、慰謝料を支払えば苛酷な状態にはならないので、
 その点も考慮される)





Q.DVに関して、情報を提供しているところはありますか?
A.DVの被害に遭っている女性を救済する民間組織
 「日本DV防止・情報センター」が平成10年に設立されています。

「日本DV防止・情報センター」
http://www.dvp-end-abuse.com/

「配偶者暴力相談支援センター」
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html

必ず一人で悩まずに、まずはアクセスしてみましょう。



Q.離婚の理由で、判例で認められた例を教えてください。
A.婚姻を継続しがたい重大な理由
1)重大な病気や障害
 看病などに誠意を尽くし、それ以上の負担を強いることが酷な場合
 (アルツハイマー病など)

2)暴力や性暴力
 過度の性交渉の欲望に応じない妻に、その度に暴力を加えた場合

3)怠惰な性格や多額の借金
 生活能力がなく怠惰な生活を続ける夫に愛情を喪失し不信感が
 決定的になった場合

4)親族との不和
 妻と夫の親族間の対立から別居し、別居2年に及んだケース

5)性格の不一致や思いやりのなさ
 妻の病気の際にも、妻の食事の世話をしようともせず放置していた場合

6)常軌を逸した宗教活動
 妻が宗教活動の集会に熱心に参加するうち活動がエスカレートし、
 家庭の安息が失われた場合

などが、判例で認められました。



Q.老齢厚生年金の支給時期はいつからになるのでしょうか?
A.年金制度の2階部分にあたる老齢厚生年金。受給資格(原則25年間)を
 満たし、厚生年金保険に加入したことがある人は、65歳から受け取ることが
 できます。また、生年月日によっては、一定要件を満たせば、
 60歳から64歳の間でも部分的に受け取れる特別支給の老齢厚生年金が
 受け取れることができます。



Q.配偶者がいるときに支給される加給年金とは?
A.厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人または中高齢の資格期間の
 短縮の特例を受ける人が、定額部分支給開始年齢に達した時点で、
 その人に生計を維持されている下記の対象者がいる場合に支給されます。
 簡単に説明すると「家族手当」のようなものと理解して貰えると良いと
 思います。

詳細については、下記の表を参考にしてください。

対象者 加給年金額 年齢制限
配偶者 224,500円
65歳未満であること(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子 各224,500円 18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子 各74,800円
18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子

※老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に下記の表の 特別加算がされます。

受給権者の生年月日 特別加算額 加給年金額の
合計額
昭和9年4月2日~
昭和15年4月1日
33,200円 257,700円
昭和15年4月2日~
昭和16年4月1日
66,200円
290,700円
昭和16年4月2日~
昭和17年4月1日
99,400円 323,900円
昭和17年4月2日~
昭和18年4月1日
132,500円 357,000円
昭和18年4月2日以後
165,600円 390,100円

【注意事項】
配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。

 





Q.年金の振替加算とは?
A.老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額の対象者に
 なっている配偶者が65歳になると、これまで支給されていた加給年金額が
 打ち切られます。この時に、老齢基礎年金を受けられる場合に、
 一定の基準により自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。
 このことを振替加算といいます。



Q.やはり事実婚の場合、年金分割はできないのでしょうか?
A.入籍する法律婚と違って、事実婚に関して、開始と終わりの時期を
 特定することにはっきりとした基準がないため、
 一方が第3号被保険者であった期間が分割対象の期間とされます。
 また、内縁の事実を証明・認定の手続きをしなければなりません。

事実婚と法律婚を繰り返した場合
1)事実婚であった場合、法律婚をした際は、事実婚だった期間中の
 年金分割は請求できません。
 ただし、離婚時には、一体の期間として扱われ、
 事実婚の第3号被保険者期間+法律婚の全期間が年金分割の対象となります。

2)法律婚から事実婚に移行するとき、必ず離婚届を出すことになりますから、
 法律婚の期間における年金分割請求が可能です。
 しかし、離婚から2年以内なら法律婚の期間も含めて年金分割できますが、
 2年を過ぎていると直近の事実婚の期間しか年金分割ができなくなります。

3)法律婚から事実婚に移行しても一体の期間として扱われません。

4)法律婚の解消時(離婚時)は常に年金分割を請求できます。

5)法律婚から事実婚に移行したときは2年の請求期限に注意しましょう。



Q.生活費の算定基準に関して、どのような方法があるか教えてください。
A.養育費の金額の目安となる家庭裁判所の審判や、地方裁判所の判決で
 採用されている算定方式は、下記になります。

【実費方式】
夫婦双方の実際の収入と生活費を基準にして算出して、分担額を決定する方法です。基本的に養育費の金額で争いがない場合に使用されます。以前はこの方式が家庭裁判所では主流でしたが、低額なのであまり使われていません。

【生活保護基準方式】
厚生労働省が毎年公表している生活保護基準額に基づいて算定する方法です。家庭裁判所が算定する方式の主流で、年齢、世帯構成、所在地など保護基準を判断の尺度にしたものです。しかし、最低生活費を基準としているので低額となっています。

【労研方式】
労働科学研究所が最低生活費消費単位を基準にして養育費を算出した方式です。審判では多く用いられてきましたが、1952年の調査記録に基づいているため、基準としては古く、現在はあまり使われていません。

【標準生活方式】
総理府統計局などの家計調査結果に基づいて、標準世帯の標準家計費をもとに養育費負担額を算出した方式です。 標準世帯の生活費を基礎にして算出されていますが、親の生活水準が考慮されていません。

【養育費算定基準表方式】
平成15年に東京と大阪の家事調停にかかわる団体「東京・大阪養育費等研究会」が簡単で迅速な養育費などの算定を目指して作成した「養育費算定表」をもとに養育費の金額が算出される方式です。

各当事者の個別事情は考慮せずに、支払い親と子供を引き取り育てる親の収入、子供の人数・年齢だけを考慮して算定しており、標準化された比率や指数を使うこの算定法と算定表では、迅速に標準額がすぐに分かります。

「養育費算定表」は東京家庭裁判所のホームページで公開されています。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html



Q.離婚後にすぐに結婚はできますか?
A.女性の場合は、離婚後6か月間は再婚できません。
 ただし、下記の場合は、6か月を待たずに再婚ができます。

1)離婚が成立する前に懐胎していた場合
2)離婚した夫と再度、結婚する場合
3)夫が3年以上行方不明になっている場合
4)離婚後優生手術を受けて妊娠不能である場合






Q.財産分与の比率はどのようにすべきでしょうか?
A.離婚に際しては夫婦が共同で形成した財産を公平に分配するために
 財産分与が認められています。その比率は原則としては2分1ですが、
 夫と妻がそれぞれ、財産形成にどの程度貢献していたかで決定されます。
 この貢献の程度は直接的な収入だけで決まるわけではありません。
 一般的には、大体以下のように決められます。

〇一緒に家業をしていたケース
夫婦が二人三脚で経営をしている中小企業などのケースでは、妻の貢献度は高く評価されて、50%の分与が認められることが多い

〇共働きのケース
近年よく見られる夫婦共働きの場合も50%の分与が一般的です。
ただし妻が家事一切をしていると、場合によっては妻の比率の方が高くなることもあります。

〇妻が専業主婦のケース
専業主婦と言っても、家事労働によって夫の勤労を支えていたと評価されます。
そのため、30~40%の分与が認められるのが一般的です。



Q.国際結婚している場合、離婚するにはどうしたらよいのでしょうか?
A.日本人同士であれば、離婚するのには、日本の法律でできますが、
 国際結婚となると、どこの国の法律に従うかという問題が出てきます。
 この場合は、夫婦の本国法がないのであれば、共通して相当期間居住を
 していた常位所地の法に従います。
 共通の常位所地がない場合には、夫婦に密接な関係のある地の法に従います。 また、一方が日本に常位所をもつ日本人であれば、
 日本法が準拠法となります。
 では、次に申立てや訴えをするにはどこで行うべきかが
 問題になってきます。調停や訴訟をどこの国の裁判所で行うべきか、
 法律に規定はありません。そこで、最高裁判所は、原則として、
 被告の住む国の裁判所で行うように判断しています。
 ただし、例外があります。

 〇原告が遺棄された場
 〇被告が行方不明の場合
 〇その他これに準ずる場合

 には、原告の住む国の裁判所で行います。


Q.国際結婚して、産まれた子供の親権はどうなるのでしょうか?
A.国際離婚における親権者・監護権者の指定についての法律は、一般には、
1)子の本国法が父または母の本国法と同じ場合は、子の本国法
2)父母の一方がいないときでも、子の本国法が他の一方の
 本国法と同じ場合は、子の本国法
3)それ以外の場合には、子の常居所地の法が適用されます。

例1)妻が日本人である場合、さらに子も日本人である場合には、
  妻と子の本国法が共に日本の法律となりますので、
  子の親権者は日本の法律に従って決められることになります。

例2)子が日本人ではなく、外国人であり、外国人の夫と子の国籍が
  同じ場合には、夫と子の国の法律に従って
  親権者は決められることになります。

但し、夫と子の共通の国の親権者・監護権者に関する法律が公序良俗に反するような場合を除きます。

例3)子が日本人でなく、両親の国籍とも子の国籍が異なる場合には、
  子の常居所地の法に従って親権者は決められることになります。
例えば、子が長期に渡って日本で暮らしている場合、常居所地法は日本法となります。そのため、日本の法律に従って親権者は決められることになります。もしも、子供が親元を離れ、イギリスで暮らしている場合は、イギリスの法律に従って親権者が決定されます。





Q.国際結婚をした際、子供の国籍はどのようになるのでしょうか?
A.国際結婚した夫婦の子供は、多くの場合、二重国籍となります。
 場合によっては、生まれた場所の国も合わせて三重国籍になることも
 あります。父親または母親が日本人であればその子供は日本国籍を取得する
 権利が生じます。
 ところが、日本の法制度は基本的に二重国籍を認めていません。
 国際結婚した場合、22歳までに国籍を選択する必要があります。
 但し、日本国籍を選んだ場合には外国籍を放棄、外国籍を選んだ場合には
 日本国籍を放棄する必要があります。
 最終的には一つの国籍を選ぶことを求められます。




Q.相手が自己破産した場合は、養育費の支払いは受けられるのでしょうか?
A.たとえ自己破産したとしても、慰謝料や養育費の支払い義務から
 免れることはありません。
 一方が配偶者に与えてしまった精神的損害である慰謝料や、
 子どもに対する扶養義務から発生する養育費の支払いについては、
 自己破産であっても決して免責することはできません。もちろんこれは、
 新たに発生する支払いだけではなく、自己破産手続き前に滞納していた
 部分についても同じことがいえます。原則として支払われなければ
 ならないものですが、相手側の支払い能力の問題が出てきます。
 いくら支払いの義務があっても、相手側にその能力がなければ回収しようが
 ありません。つまり、相手に自己破産をされたとして、
 支払いを受けられなくなるわけではないのですが、実際に金銭を
 回収できるかどうかという問題がどうしても発生してしまいます。
 自己破産をしているということは、相手の資力に期待はできません。
 支払いを受ける側が泣き寝入り状態になってしまう可能性が十分にあります。
 支払いについてはある程度の猶予を持たせたり、減額したりするといった、
 譲歩が必要になってくるということを頭に入れておいた方が良いでしょう。



Q.養育費は、再婚をすると貰えなくなるのでしょうか?
A.養育費は貰えなくなることはありません。
 法律上、父親は子供を扶養する義務があります(民法第877条第1項)。
 この扶養義務は父親と母親が離婚した場合でも変わりありません。
 よって、父親は、離婚後も、元妻に引き取られた子どもの養育費を
 支払う義務があります。



Q.離婚の際に、養育費に関して求めないと約束をしてしまった場合は、
 今後一切養育費を求めることはできないのでしょうか?
A.そもそも、養育費用は、父母共同で背負うべき支払われる生活費や教育費の
 ことです。また、養育費の請求権は子どもの権利でもあるため、
 親が権利を放棄したとしても子ども自身が請求できる場合もあります。
 また、離婚後にお互いの状況が変化した場合、
 養育費の減額や増額が出来ます。



参考文献
新日本法規出版 離婚事件の手続と書式
新日本法規出版 離婚給付算定事例集
三修社 離婚と慰謝料のしくみと手続

 

2020年01月21日